能登半島周辺の海藻

~能登詞藻庵(のとしそうあん)の海藻日誌~

海藻を手に・・・「酒津のトンドウ」

NHKの『新日本風土記』が好きで録りだめしています。

土地土地の習俗をとり上げているので、時々海藻が出てくる回があります。
これは『新日本風土記』を5分に短縮した姉妹番組『もういちど、日本』で放送された「トンドウ」の回。
鳥取市酒津地区、祭りの日、子供たちが手にモク類(ホンダワラ類)を持って海へ行き、海水でモクと体を清めます。

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これが「トンドウ」

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ジョロモクだろうか...?

トンドウの周りをまわったのち、集落へ向かいます。

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家々を巡って清めの口上を唱え、各屋にモクの切れ端を置いていきます。

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御幣を振るうように、モクを元気よく振るいます

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神の形代あるいは神気のこもったモクを人々は大切に祀って、一年の無病息災を願うのです。

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朴訥として集落に息づく営みを感じる

あくまでも個人的な見方ですが、男の子がこの役目を負うのは、『七つまでは神のうち』という言葉にあるように、年若く清らかな男子は神の子の名残りがあり、神の依り代となると考えられているからでしょう。

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集落に古くから伝わる行事である

トンドウは蛇がとぐろをまいた形に見えます。
蛇は害獣である鼠を食すことから、稲作の神、豊穣の神とされています。
その豊穣の神がトンドウを通して子供たちに宿り、集落に実りと一年の無病息災をもたらしているのではないでしょうか。
なお、日本の原始蛇信仰に関しては 吉野裕子『蛇 日本の蛇信仰』(講談社学術文庫)に詳しいです。

しかしそれにしても、なぜモク類を形代に用いるのでしょうか?
漁村でありますから、豊漁を祈願するために、モクを用いるのでしょうか。
ホンダワラやマメタワラの ”タワラ” は ”穂俵(ほだわら)” に通じ、古の日本人はホンダワラ類が無数にその身に結ぶ気胞(空気袋、浮き袋)を、豊かに実る稲穂に見立てました。

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ホンダワラ Sargassum fulvellum の気胞

よってモク類(ホンダワラ類)自体が、海と山里の豊かな恵みを象徴しているのかも知れません。

 

各地に伝わる伝統行事とひっそり用いられる海藻たち...

海藻の民俗学、面白いぞ!!

 

以下に元ツイートも貼り付けておきます。